2015年05月15日更新
前回のブログでは、もし、グリエルとの間の契約に、日本で裁判ができるということを定めていなかったとしても、日本で裁判ができる(日本に国際裁判管轄が認められる)という結論になりました。
(ちなみに今日、グリエルが「契約書にはサインしてない」と言っているという記事が出てましたが、ホントか?という感じですね。)
では、日本で裁判ができるとして、その際に使われる法律は
いわゆる
を、今回は考えてみたいと思います。
日本で裁判ができるとしても、判断の基準となる法律がどこの国の法律になるかによっては、全く別の結論になることも予想されますし、そもそも、アメリカ法くらいならともかく、
(今回は、特に相手の国はキューバという極めて特殊な国なので余計に)ので、ここは非常に重要な局面になります。
さて、国際的な問題について、どの国の法律が適用されるかについては、
という日本の法律があります。
さて、その法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)の7条には、
「法律行為の成立及び効力は、
による」と規定されています。
したがって、球団がグリエルとの契約の中で、
準拠法は日本法にする
という定めをしておけば、紛争になった場合、裁判所で日本法に基づいて裁判をしてもらえることになります。
(国際的な取引においては、契約の中で準拠法を定めておくということが重要ということです。)
では、仮に契約で定めていない場合にはどうなるか?
通則法の8条に規定があります。
8条1項には、
「法律行為の当時において当該法律行為に
が準拠法になるものとされています。
そして、8条2項では、1項の法律行為において
を当事者の一方のみが行うものであるときは、その
が1項の
とされています。
これを今回のグリエルの問題について考えると、
契約の内容自体は、グリエルが横浜に来て、野球をする、これに対して球団は年俸を支払うという契約です。
この契約で特徴的なのは、
なので、これが8条2項でいう
になり、「当事者の一方」であるグリエルのみが行います。
すると、8条2項の要件にあてはまり、「特徴的な給付」を行う当事者である
が
と
されます。
しかし、8条2項はあくまで定めがないときに、最密接関係地法を見つけやすくするための規定に過ぎず、他に契約についてもっと関係が深い場所があるのであれば、その地の法が最密接関係地法ということになります。
今回についてみると、何度も言っていますが、契約に定められたグリエルの義務は、横浜に来て、スタジアムで球団のために野球のプレイをするということになります。
すると、
べきものであり、今回の契約についての関係はキューバよりも、
ということになります。
したがって、
今回の契約についての
ということになります。
よって、今回の結論としては、
となる、ということになります。
キューバ法が適用されるとなると、キューバ法っていったいどういう決まりがあるのかすら分からないでしょうから、良かった良かったというところです。